2006年( ネン )3月( グワツ )18日( ニチ ) 著作者( チヨ サク シヤ ) 佐藤正彦( サ トウ マサ ヒコ )
インターネットが普及( フ キフ )するにつれて、 歴史的假名遣( レキ シ テキ カ ナ ヅカ )ひが靜( シヅ )かなブームを呼( ヨ )んでゐます。 歴史的假名遣( レキ シ テキ カ ナ ヅカ )ひは傳統的假名遣( デン トウ テキ カ ナ ヅカ )ひとも呼( ヨ )ばれ、 それを肯定的( コウ テイ テキ )に使( ツカ )ふ人( ヒト )は正假名遣( セイ カ ナ ヅカ )ひと呼( ヨ )び、 否定的( ヒ テイ テキ )な人( ヒト )や關心( クワン シン )のない人( ヒト )は舊假名遣( キウ カ ナ ヅカ )ひと呼( ヨ )びます。 ここを訪( オトヅ )れてくださつた皆( ミナ )さんや私( ワタクシ )は、もちろん肯定的( コウ テイ テキ )に使( ツカ )ふ人( ヒト )ですから、 以後( イ ゴ )、正假名遣( セイ カ ナ ヅカ )ひと呼( ヨ )びます。
正假名遣( セイ カ ナ ヅカ )ひは、現代假名遣( ゲン ダイ カ ナ ヅカ )ひ制定以後( セイ テイ イ ゴ )、 情報發信能力( ジヤウ ホウ ハツ シン ノウ リヨク )がマスメディアに獨占( ドク セン )されてゐた時代( ジ ダイ )では、 公平( コウ ヘイ )な評價( ヒヤウ カ )をされる機會( キ クワイ )がありませんでした。 正假名遣( セイ カ ナ ヅカ )ひで情報( ジヤウ ホウ )を發信( ハツ シン )しようにも、 マスメディアは消極的( セウ キヨク テキ )でした。 正假名遣( セイ カ ナ ヅカ )ひの支持者( シ ヂ シヤ )と情報( ジヤウ ホウ )を交換( カウ クワン )しようとしても 個人( コ ジン )の力( チカラ )ではどうにもなりません。 情報發信( ジヤウ ホウ ハツ シン )も同人誌( ドウ ジン シ )レベルにとどまつてゐました。
ところが、インターネットでは、 個人( コ ジン )がマスメディアを通( トホ )さずに全世界( ゼン セ カイ )に向( ム )けて情報( ジヤウ ホウ )を發信( ハツ シン )できます。 正假名遣( セイ カ ナ ヅカ )ひで文章( ブン シヤウ )を書( カ )けば、檢索( ケン サク )エンジンを通( トホ )して、 いつのまにか正假名遣( セイ カ ナ ヅカ )ひの支持者( シ ヂ シヤ )が集( アツ )まり、 大( オホ )きな輪( ワ )となります。實際( ジツ サイ )、正假名遣( セイ カ ナ ヅカ )ひに觸( フ )れると、 その合理性( ガフ リ セイ )に感銘( カン メイ )し、また、新( アラ )たな輪( ワ )が廣( ヒロ )がつていきます。 この文章( ブン シヤウ )は、その輪( ワ )を廣( ヒロ )げ、正假名遣( セイ カ ナ ヅカ )ひに興味( キヨウ ミ )はあるが、 實踐( ジツ セン )をためらつてゐる人( ヒト )に、 正假名遣( セイ カ ナ ヅカ )ひの「速習術( ソク シフ ジユツ )」を傳( ツタ )へるのが目的( モク テキ )です。 なるべく少( スク )ない項目( カウ モク )で、大( オホ )きな效果( カウ クワ )を上( ア )げることを目的( モク テキ )としてゐます。
なほ、この文章( ブン シヤウ )は、 常用漢字( ジヤウ ヨウ カン ジ )に慣( ナ )れた讀者( ドク シヤ )のための略字版( リヤク ジ ハン )と、 傳統的( デン トウ テキ )な字體( ジ タイ )を用( モチ )ゐた正字版( セイ ジ ハン )の二種類( ニ シユ ルイ )を用意( ヨウ イ )してゐます。
佐藤正彦( サ トウ マサ ヒコ )
| ・ 1. 片假名( カタ カ ナ ) | ・ 2. 漢字( カン ジ ) | ・ 3. 平假名( ヒラ ガ ナ ) | ||
| ・ 4. 「ワ」 | ・ 5. 「イ」 | ・ 6. 「ウ」 | ・ 7. 「エ」 | ・ 8. 「オ」 |
| ・ 9. 「ジ」 | ・ 10. 「ズ」 |
日本語( ニ ホン ゴ )には、平假名( ヒラ ガ ナ )と片假名( カタ カ ナ )の二( フタ )つの表音文字( ヘウ オン モ ジ )があります。 どちらも正假名遣( セイ カ ナ ヅカ )ひの對象( タイ シヤウ )ですが、 片假名( カタ カ ナ )には、それに加( クハ )へて、發音( ハツ オン )を忠實( チユウ ジツ )に表現( ヘウ ゲン )する音寫( オン シヤ )といふ機能( キ ノウ )があります。 現在( ゲン ザイ )の文章( ブン シヤウ )は、主( オモ )に漢字( カン ジ )と平假名( ヒラ ガ ナ )で構成( コウ セイ )されてをり、 片假名( カタ カ ナ )は外來語( グワイ ライ ゴ )を表記( ヘウ キ )するための音寫用( オン シヤ ヨウ )の文字( モ ジ )として使( ツカ )はれてゐます。 從( シタガ )つて、片假名( カタ カ ナ )は音寫用( オン シヤ ヨウ )に使( ツカ )ひませう。 以下( イ カ )に音寫用( オン シヤ ヨウ )に使( ツカ )はれる片假名( カタ カ ナ )を紹介( セウ カイ )します。
日本語( ニ ホン ゴ )は、自立部( ジ リツ ブ )と付屬部( フ ゾク ブ )が交互( カウ ゴ )に現( アラハ )れて文章( ブン シヤウ )を構成( コウ セイ )します。 自立部( ジ リツ ブ )は、それ自體( ジ タイ )が具體的( グ タイ テキ )な内容( ナイ ヨウ )を持( モ )つもので、 付屬部( フ ゾク ブ )は、自立部( ジ リツ ブ )を補完( ホ クワン )して文( ブン )の構成要素( コウ セイ エウ ソ )となります。 自立部( ジ リツ ブ )がタイルなら、付屬部( フ ゾク ブ )は、それらをつなぐ接着劑( セツ チヤク ザイ )と考( カンガ )へればよいでせう。 自立部( ジ リツ ブ )は、「山( ヤマ )」「風( カゼ )」「話( ハナシ )」「靜( シヅ )」などの部分( ブ ブン )で、付屬部( フ ゾク ブ )は、 「て/に/を/は」「です」「ます」「~てくる」や送( オク )り假名( ガ ナ )の部分( ブ ブン )です。 また、「そして」「しかし」などの接續用( セツ ゾク ヨウ )の言葉( コト バ )や、 「これ」「それ」などの指示用( シ ジ ヨウ )の言葉( コト バ )も廣義( クワウ ギ )の付屬部( フ ゾク ブ )に含( フク )まれます。 日本語( ニ ホン ゴ )では、傳統的( デン トウ テキ )に、自立部( ジ リツ ブ )を漢字( カン ジ )で書( カ )き、付屬部( フ ゾク ブ )を假名( カ ナ )で書( カ )いてきました。 從( シタガ )つて、正假名遣( セイ カ ナ ヅカ )ひが本當( ホン タウ )に必要( ヒツ エウ )になるのは付屬部( フ ゾク ブ )に限( カギ )られます。 具體的( グ タイ テキ )に以下( イ カ )の文章( ブン シヤウ )で説明( セツ メイ )してみませう。
この文章( ブン シヤウ )をすべて平假名( ヒラ ガ ナ )で書( カ )いて正假名遣( セイ カ ナ ヅカ )ひを適用( テキ ヨウ )したものと、 自立部( ジ リツ ブ )を漢字( カン ジ )で書( カ )いて正假名遣( セイ カ ナ ヅカ )ひを適用( テキ ヨウ )したものを紹介( セウ カイ )します。
|
|
|
文章( ブン シヤウ )として續( ツヅ )けて書( カ )くと以下( イ カ )のやうになります。
現代假名遣( ゲン ダイ カ ナ ヅカ )ひと比( クラ )べると、自立部( ジ リツ ブ )を漢字( カン ジ )で書( カ )いたときに、 違( チガ )ひがあるのは「終( ヲ )はり」の部分( ブ ブン )だけです。 このやうに漢字( カン ジ )を適切( テキ セツ )に使( ツカ )ふことは正假名遣( セイ カ ナ ヅカ )ひの速習術( ソク シフ ジユツ )に大( オホ )きな效果( カウ クワ )があります。 (實( ジツ )は、「終( ヲ )はり」は「終( ヲハ )り」とも表記( ヘウ キ )できるので、この例( レイ )では現代假名遣( ゲン ダイ カ ナ ヅカ )ひと違( チガ )ひがなくなります。 漢字( カン ジ )を適切( テキ セツ )に使( ツカ )ふことが、正假名遣( セイ カ ナ ヅカ )ひ實踐( ジツ セン )への近道( チカ ミチ )であることを示唆( シ サ )します。)
「一週間( イツ シウ カン )は・・・」の例文( レイ ブン )で示( シメ )したやうに、 自立部( ジ リツ ブ )まで正假名遣( セイ カ ナ ヅカ )ひの對象( タイ シヤウ )にすると、 漢字( カン ジ )の音讀( オン ヨ )みを表記( ヘウ キ )する字音假名遣( ジ オン カ ナ ヅカ )ひも習得( シフ トク )する必要( ヒツ エウ )があります。 學問的( ガク モン テキ )には、字義( ジ ギ )と形聲文字( ケイ セイ モ ジ )を手掛( テ ガ )かりに字音假名遣( ジ オン カ ナ ヅカ )ひも興味深( キヨウ ミ ブカ )いのですが、 速習術( ソク シフ ジユツ )では、自立部( ジ リツ ブ )を漢字( カン ジ )で書( カ )くので、字音假名遣( ジ オン カ ナ ヅカ )ひを覺( オボ )える必要( ヒツ エウ )はありません。 一部( イチ ブ )、漢字( カン ジ )の音讀( オン ヨ )みに由來( ユ ライ )する言葉( コト バ )が付屬部( フ ゾク ブ )にもありますが、 それらは、數例( スウ レイ )の慣用句( クワン ヨウ ク )に限( カギ )られるので、個別( コ ベツ )に覺( オボ )えれば大丈夫( ダイ ヂヤウ フ )です。
正假名遣( セイ カ ナ ヅカ )ひで使( ツカ )ふ平假名( ヒラ ガ ナ )は、 イロハ歌( ウタ )で使( ツカ )はれる47文字( モ ジ )に、はねる音( オト )の「ん」を加( クハ )へた48文字( モ ジ )です。 また、符號( フ ガウ )として、濁點( ダク テン )「゛」、半濁點( ハン ダク テン )「゜」が使( ツカ )へます。 小書( コ ガ )き假名( カ ナ )「ゃゅょっ」は、なるべく使( ツカ )はず、普通( フ ツウ )の大( オホ )きさの假名( カ ナ )にして書( カ )きます。 長音符號( チヤウ オン フ ガウ )「ー」は使( ツカ )ひません。以下( イ カ )に平假名用( ヒラ ガ ナ ヨウ )に使( ツカ )ふものを紹介( セウ カイ )します。
正假名遣( セイ カ ナ ヅカ )ひとして注意( チユウ イ )を要( エウ )するものは、 「ワイウエオ」「ジズ」の7つの音( オト )に關連( クワン レン )する假名( カ ナ )です。 以下( イ カ )の章( シヤウ )では、これらの音( オト )に關連( クワン レン )する項目( カウ モク )を紹介( セウ カイ )します。
| 讀( ヨ )み | ワ | イ | ウ | エ | オ | ジ | ズ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 語頭( ゴ トウ )の候補( コウ ホ ) | わ | い、ゐ | う | え、ゑ | お、を | じ、ぢ | ず、づ |
| 語中( ゴ チユウ )の候補( コウ ホ ) | わ、は | い、ゐ、ひ | う、ふ | え、ゑ、へ | お、を、ほ | じ、ぢ | ず、づ |
語頭( ゴ トウ )で「ワ」と發音( ハツ オン )するものは、すべて「わ」と書( カ )きますが、 語中( ゴ チユウ )で「ワ」と發音( ハツ オン )するものは、「は」「わ」の二( フタ )つの候補( コウ ホ )があります。 原則( ゲン ソク )として、語頭( ゴ トウ )の「ワ」は「わ」と書( カ )き、 語中( ゴ チユウ )の「ワ」は「は」と書( カ )きます。
送( オク )り假名( ガ ナ )によつては、語源( ゴ ゲン )を意識( イ シキ )して、付屬部( フ ゾク ブ )を多( タ )めに書( カ )くときもあります。 その場合( バ アヒ )、「植( ウ )わる」「据( ス )わる」の二( フタ )つは「わ」と書( カ )きます。ただし、これらの言葉( コト バ )は、 送( オク )り假名( ガ ナ )を最小限( サイ セウ ゲン )にとどめて「植( ウワ )る」「据( スワ )る」と書( カ )くことで回避( クワイ ヒ )できるので、 例外項目( レイ グワイ カウ モク )として設( マウ )けてゐません。
語頭( ゴ トウ )で「イ」と發音( ハツ オン )するものは、「い」「ゐ」の二( フタ )つの候補( コウ ホ )があり、 語中( ゴ チユウ )で「イ」と發音( ハツ オン )するものは、「い」「ひ」「ゐ」の三( ミッ )つの候補( コウ ホ )があります。 原則( ゲン ソク )として、「イ」は「い」と書( カ )きます。 ただし、「~イマス」といふ表現( ヘウ ゲン )には例外( レイ グワイ )があります。
| 「~イマス」 | 候補( コウ ホ ) | 表記( ヘウ キ ) | 備考( ビ カウ ) | |
|---|---|---|---|---|
| 例外( レイ グワイ )(5-1) | オモイマス | 「ひ」 | 思( オモ )ひます | 「思( オモ )ひ」「思( オモ )ひたい」「思( オモ )ひ出( デ )」など、すべて「思( オモ )ひ」になる。 |
| ~イマス | ~ひます | 「~ひ」「~ひたい」「~ひ方( カタ )」など、すべて「~ひ」になる。 | ||
| 例外( レイ グワイ )(5-2) | モチイマス | 「ゐ」 | 用( モチ )ゐひます | 「用( モチ )ゐ」「用( モチ )ゐる」「用( モチ )ゐ方( カタ )」など、すべて「用( モチ )ゐ」になる。 |
| 例外( レイ グワイ )(5-3) | オイマス | 「い」 | 老( オ )います | 「老( オ )い」「老( オ )いる」「老( オ )い先( サキ )」など、すべて「老( オ )い」になる。 |
| ナサイマス | なさいます | 「やりなさい」など、すべて「なさい」になる。 |
參考( サン カウ )(5)にあるやうに、漢字( カン ジ )で書( カ )く自立部( ジ リツ ブ )を平假名( ヒラ ガ ナ )で書( カ )く場合( バ アヒ )、 訓讀( クン ヨ )みでは、「ひ」と書( カ )くのが原則( ゲン ソク )です。 例( タト )へば、「幸( サチ )」「災( サイ )」に送( オク )り假名( ガ ナ )を付( ツ )けると、 「幸( サイハ )ひ」「災( ワザハ )ひ」のように「イ」の部分( ブ ブン )を「ひ」と書( カ )きます。
語頭( ゴ トウ )で「ウ」と發音( ハツ オン )するものは、すべて「う」と書( カ )きますが、 語中( ゴ チユウ )で「ウ」と發音( ハツ オン )するものは、「う」「ふ」の二( フタ )つの候補( コウ ホ )があります。 原則( ゲン ソク )として、「ウ」は「う」と書( カ )きます。
| 「~ウトキ」 | 候補( コウ ホ ) | 表記( ヘウ キ ) | 備考( ビ カウ ) | |
|---|---|---|---|---|
| 例外( レイ グワイ )(6-1) | オモウトキ | 「ふ」 | 思( オモ )ふとき | 「思( オモ )ふ」「思( オモ )ふなら」「思( オモ )ふらしい」など、すべて「思( オモ )ふ」になる。 |
| ~ウトキ | ~ふとき | 「~ふ」「~ふなら」「~ふらしい」など、すべて「~ふ」になる。 |
「~ウトキ」と言( イ )へるとき、「~ふとき」と書( カ )きます。 この場合( バ アヒ )、「~ふ」はすべてに適用( テキ ヨウ )します。 例( タト )へば、「思( オモ )ふとき」と言( イ )へれば、「思( オモ )ふ」「思( オモ )ふなら」「思( オモ )ふらしい」も同樣( ドウ ヤウ )に、 「思( オモ )ふ」です。この例外( レイ グワイ )(6-1)は、「イ」に關係( クワン ケイ )する例外( レイ グワイ )(5-1)「思( オモ )ひ」と關連付( クワン レン ヅ )けて覺( オボ )えるとよいでせう。
「う」には、前( マヘ )の假名( カ ナ )と一體化( イツ タイ クワ )して、長音( チヤウ オン )を表( アラハ )す機能( キ ノウ )があります。 場合( バ アヒ )によつては、前( マヘ )の假名( カ ナ )が置( オ )き換( カ )へられます。 「う」の前( マヘ )がオ段( ダン )の場合( バ アヒ )、原則( ゲン ソク )としてア段( ダン )に變( カ )へて、書( カ )きます。 ただし、「オウ」の組( ク )み合( ア )はせでは、「×あう」でなく、「はう」になります。 その他( タ )の例外( レイ グワイ )として、個別( コ ベツ )に覺( オボ )える表現( ヘウ ゲン )が五( イツ )つあります。
|
|
ここで、注意( チユウ イ )が必要( ヒツ エウ )なのは、 原則( ゲン ソク )(6a)の「起( オ )きるやう」と例外( レイ グワイ )(6a-2) の「起( オ )きよう」との違( チガ )ひです。 兩者( リヤウ シヤ )の區別( ク ベツ )の付( ツ )け方( カタ )は、「う」の後( ウシ )ろに「だ」を付( ツ )ける方法( ハウ ハフ )で、 付( ツ )く場合( バ アヒ )は「やう」となり、付( ツ )かない場合( バ アヒ )は「よう」となります。 その他( タ )に、「オキヨウガナイ」といふ表現( ヘウ ゲン )がありますが、假名( カ ナ )で書( カ )くと、 實( ジツ )は、原則( ゲン ソク )(6a)に從( シタガ )ひ、「おきやうがない」になるのですが、 何( ナン )よりも、漢字( カン ジ )を使( ツカ )ふことを優先( イウ セン )して、「起( オ )き樣( ヤウ )がない」とすれば、 迷( マヨ )ひ樣( ヤウ )がなくなります。「起( オ )きよう」といふ表現( ヘウ ゲン )だけが例外( レイ グワイ )になつてゐるのは、 この表現( ヘウ ゲン )が比較的近世( ヒ カク テキ キン セイ )にできたものなので、現在( ゲン ザイ )の發音( ハツ オン )に近( チカ )い假名遣( カ ナ ヅカ )ひが 採用( サイ ヨウ )されてゐるからです。
また、例外( レイ グワイ )(6a-2)には、指示用( シ ジ ヨウ )に使( ツカ )はれる言葉( コト バ )もあります。
例外( レイ グワイ )(6a-3)や例外( レイ グワイ )(6a-4)は挨拶( アイ サツ )や會話文( クワイ ワ ブン )で使( ツカ )はれる表現( ヘウ ゲン )です。 自立部( ジ リツ ブ )を漢字( カン ジ )で書( カ )けば、多( オホ )くの場合( バ アヒ )、假名遣( カ ナ ヅカ )ひを意識( イ シキ )する必要( ヒツ エウ )はありません。
「思( オモ )うた」「向( ム )かうに行( イ )く」などは、 ×「思( オモ )ふた」×「向( ム )かふに~」と書( カ )きたくなりますが、 この場合( バ アヒ )、長音( チヤウ オン )に關( クワン )する規則( キ ソク )が適用( テキ ヨウ )されます。 「思( オモ )うた」は例外( レイ グワイ )(6a-3)が、「向( ム )かうに~」は原則( ゲン ソク )(6a)が適用( テキ ヨウ )されます。 「ムカウ」+「トキ」は可能( カ ノウ )なので、例外( レイ グワイ )(6-1)で「向( ム )かふ」と書( カ )きますが、 「ムコウ」+「トキ」は不可能( フ カ ノウ )なので、原則( ゲン ソク )(6a)で「向( ム )かう」と書( カ )きます。 しかし、このやうな紛( マギ )らはしい例( レイ )は、ごく一部( イチ ブ )なので、 神經質( シン ケイ シツ )になる必要( ヒツ エウ )はありません。
語頭( ゴ トウ )で「エ」と發音( ハツ オン )するものは、「え」「ゑ」の二( フタ )つの候補( コウ ホ )があり、 語中( ゴ チユウ )で「エ」と發音( ハツ オン )するものは、「え」「へ」「ゑ」の三( ミッ )つの候補( コウ ホ )があります。 原則( ゲン ソク )として、語頭( ゴ トウ )の「エ」は「え」と書( カ )き、語中( ゴ チユウ )の「エ」は「へ」と書( カ )きます。 例外( レイ グワイ )は、主( オモ )に「~える」といふ表現( ヘウ ゲン )で現( アラハ )れます。「エ」の例外( レイ グワイ )は、 使用頻度( シ ヨウ ヒン ド )の高( タカ )くない言葉( コト バ )に現( アラハ )れ、しかも確實( カク ジツ )な數( カズ )が決( キ )まらないので、 他( タ )の例外( レイ グワイ )と比( クラ )べて、覺( オボ )える數( カズ )が多( オホ )くなります。
| ~え~ | 甘( アマ )える | 癒( イ )える | 脅( オビ )える | 肥( コ )える | 絶( タ )える | 費( ツヒ )える | 煮( ニ )える | 生( ハ )える | 冷( ヒ )える | 増( フ )える | 燃( モ )える |
| ~や~ | 甘( アマ )やかす | 癒( イ )やす | 脅( オビ )やかす | 肥( コ )やす | 絶( タ )やす | 費( ツヒ )やす | 煮( ニ )やす | 生( ハ )やす | 冷( ヒ )やす | 増( フ )やす | 燃( モ )やす |
| ~え~ | 越( コ )える | 冴( サ )える | 榮( サカ )える | 聳( ソビ )える | 萎( ナ )える | 映( ハ )える | 萌( モ )える |
| ~や~ | (肥( コ )やす) | (さやか) | (さかやかす) | (そびやかす) | (なやす) | (生( ハ )やす) | (燃( モ )やす) |
例外( レイ グワイ )(7-1) に該當( ガイ タウ )しないものが、例外( レイ グワイ )(7-2)です。 比較的使用( ヒ カク テキ シ ヨウ )されるものとして、 「覺( オボ )える」「消( キ )える」「聞( キ )こえる」「凍( コゴ )える」「見( ミ )える」「悶( モダ )える」の六( ムッ )つを覺( オボ )えればよいでせう。 例外( レイ グワイ )(7-3) は「植( ウ )ゑる」「飢( ウ )ゑる」「据( ス )ゑる」の三( ミッ )つと、接續用( セツ ゾク ヨウ )の「ゆゑに」に限定( ゲン テイ )されてゐます。
例外( レイ グワイ )(7-1)に關連( クワン レン )して、 「燃( モ )える/燃( モ )やす」「變( カ )へる/變( カ )はる」「据( ス )ゑる/据( ス )わる」の對應( タイ オウ )を意識( イ シキ )することは、 正假名遣( セイ カ ナ ヅカ )ひの實踐( ジツ セン )に效果的( カウ クワ テキ )です。
語頭( ゴ トウ )で「オ」と發音( ハツ オン )するものは、「お」「を」の二( フタ )つの候補( コウ ホ )があり、 語中( ゴ チユウ )で「オ」と發音( ハツ オン )するものは、「お」「ほ」「を」の三( ミッ )つの候補( コウ ホ )があります。 原則( ゲン ソク )として、語頭( ゴ トウ )の「オ」は「お」と書( カ )き、語中( ゴ チユウ )の「オ」は「ほ」と書( カ )きます。 漢字( カン ジ )で書( カ )く自立部( ジ リツ ブ )を除( ノゾ )いた部分( ブ ブン )で「オ」が出現( シユツ ゲン )するときは、 「~オ~スル」「~オウ」「~テオク」「~テオル」「オ~スル」「オ~ニナル」などの定型的( テイ ガタ テキ )な表現( ヘウ ゲン )に限( カギ )られます。
餘談( ヨ ダン )ですが、「植( ウ )わる」「据( ス )わる」「ゐる」「植( ウ )ゑる」「据( ス )ゑる」「をる」のやうに、 正假名遣( セイ カ ナ ヅカ )ひでワ行( ギヤウ )になるものは、共通( キヨウ ツウ )の語源( ゴ ゲン )として、 「座( スワ )る」といふ意味( イ ミ )が含( フク )まれると言( イ )はれます。
「ジ」と發音( ハツ オン )するものは、「じ」「ぢ」の二( フタ )つの候補( コウ ホ )があります。 原則( ゲン ソク )として「ジ」は「じ」と書( カ )きます。 漢字( カン ジ )で書( カ )く自立部( ジ リツ ブ )を含( フク )めれば、「ぢ」が使( ツカ )はれることも多( オホ )いのですが、 平假名( ヒラ ガ ナ )で書( カ )く付屬部( フ ゾク ブ )に限( カギ )れば、 例外( レイ グワイ )(9-1)で示( シメ )した言葉( コト バ )とその關連語( クワン レン ゴ )になります。 關連語( クワン レン ゴ )には、「ぢ」と「づ」が交換( カウ クワン )するものもあります。 例( レイ )として、「恥( ハ )づかしい」が擧( ア )げられます。 「~ぢやない」は會話( クワイ ワ )で使( ツカ )はれる表現( ヘウ ゲン )で、「~では~」から變化( ヘン クワ )したので、 「で」と同( オナ )じダ行( ギヤウ )の「ぢ」を使( ツカ )ひます。同( オナ )じやうな表現( ヘウ ゲン )として、 「悲( カナ )しんでしまふ」→「悲( カナ )しんぢまふ/悲( カナ )しんぢやふ」、 「さうであらう」→「さうぢやらう」などがあります。
「ズ」と發音( ハツ オン )するものは、「ず」「づ」の二( フタ )つの候補( コウ ホ )があります。 原則( ゲン ソク )として「ズ」は「ず」と書( カ )きます。 漢字( カン ジ )で書( カ )く自立部( ジ リツ ブ )を含( フク )めれば、「づ」が使( ツカ )はれることのはうが多( オホ )いのですが、 平假名( ヒラ ガ ナ )で書( カ )く付屬部( フ ゾク ブ )に限( カギ )れば、 例外( レイ グワイ )(10-1)で示( シメ )した言葉( コト バ )とその關連語( クワン レン ゴ )になります。 關連語( クワン レン ゴ )には、「ぢ」と「づ」が交換( カウ クワン )するものもあります。
| 規則( キ ソク ) | 送( オク )り假名( ガ ナ ) | その他( タ )の付屬部( フ ゾク ブ ) | ||
|---|---|---|---|---|
| 原則( ゲン ソク ) | 原則( ゲン ソク )(4)(7)(8) | 「ワ」→「は」、「エ」→「へ」、「オ」→「ほ」 | ||
| 原則( ゲン ソク )(5)(6)(9)(10) | 「イ」→「い」、「ウ」→「う」、「ジ」→「じ」、「ズ」→「ず」 | |||
| 原則( ゲン ソク )(6a) | オ段( ダン )+「ウ」→同一行( ドウ イツ ギヤウ )のア段( ダン )+「う」 | |||
| 一般( イツ パン )の例外( レイ グワイ ) | 例外( レイ グワイ )(5-1) | 「~イマス」→「~ひます」 | ||
| 例外( レイ グワイ )(6-1) | 「~ウトキ」→「~ふとき」 | |||
| 例外( レイ グワイ )(6a-1) | 「~オウ」→「~はう」 | |||
| 例外( レイ グワイ )(7a-1) | 「~エル/~ヤス」→「~える/~やす」 | |||
| 個別( コ ベツ )の例外( レイ グワイ ) | 例外( レイ グワイ )(5-2) | 「ゐる/~てゐる/~でゐる」「率( ヒキ )ゐる」「用( モチ )ゐる」 | 「くらゐ/ぐらゐ」「せゐ」 | |
| 例外( レイ グワイ )(5-3) | 「老( オ )いる」「悔( ク )いる」「報( ムク )いる/酬( ムク )いる」 「いらつしやいます」「おつしやいます」 「くださいます」「ございます」「なさいます」 |
|||
| 例外( レイ グワイ )(6a-2) | 「でせう」「ませう」 「どう」「もう」「~よう」 |
|||
| 例外( レイ グワイ )(7-2) | 「覺( オボ )える」「消( キ )える」「聞( キ )こえる」「凍( コゴ )える」「饐( ス )える」 「見( ミ )える」「悶( モダ )える」(「こぎえる」「まみえる」) |
|||
| 例外( レイ グワイ )(7-3) | 「植( ウ )ゑる」「飢( ウ )ゑる」「据( ス )ゑる」 | 「ゆゑに」 | ||
| 例外( レイ グワイ )(8-2) | 「をる/~てをる/~でをる」 | 「~を~する」 | ||
| 例外( レイ グワイ )(9-1) | 「閉( ト )ぢる/綴( ト )ぢる」「恥( ハ )ぢる」(「怖( オ )ぢる」「攀( ヨ )ぢる」) | 「~ぢやない」 | ||
| 例外( レイ グワイ )(10-1) | 「いづれ」「づつ」「まづ」 | |||
| 特殊( トク シユ )な例外( レイ グワイ ) | 例外( レイ グワイ )(6a-3) | 「~ウゴザイマス」→「~うございます」 | ||
| 例外( レイ グワイ )(6a-4) | 「~ウタトキ」→「~うたとき」 | |||